建設業に従事し、 公共工事の受注のため競争入札を行う事業者様にとって、 経営事項審査(以下「経審」)の点数アップは 非常に重要なことです。

弊事務所とお付き合いのある建設業者様で、 ご希望のクライアント様には経審の 決算確定前シミュレーションを行っています。

決算内容は、 経営状況分析評点(Y点)に影響があるものですが、 決算が確定すると、自動的にY点も確定してしまいます。

Y点は、総合評定値(P点)に大きく影響を与えますので、 目標P点がある場合には、事前に目標に達するようシミュレーションし、 コントロールする必要があります。 (もちろん不正に決算を修正することはできませんが)

とはいえ、実際問題としてY点の改善は、 長期的視点をもって行っていく必要がありますので、 顧問税理士さんの協力も不可欠です。

弊事務所では、 顧問税理士さんとも協力して、 財務内容の改善を図り、 Y点アップ対策を行います。

経営状況の評点アップ対策

評点アップ対策はいろいろありますが、 Y点に対する寄与度の高い順に対策を行うと 効率的です。

以下では、 分析指標ごとの評点アップ対策優先順位をまとめています。

分析指標評点アップ対策
★負債抵抗力
総支払利息比率 X₁
寄与度 29.9%
対策優先順位①
(支払利息-受取利息配当金)÷ 売上高 × 100
売上高に対する純粋な支払利息の割合を見る比率で、低いほどよい
定期等の固定預金を解約し、借入金を返済
過剰な在庫を調整し、売却金で借入金を返済
・借入金を低利の金融機関に借り換えを行う
増資を行い、その資金で借入金を返済
経営に関係のない固定資産を売却し、借入金を返済
負債回転期間 Ⅹ₂
寄与度 11.4%
対策優先順位④
(流動負債+固定負債)÷ 売上高 × 100
負債総額が月商の何月分に相当するかを見る比率で、低いほどよい
定期等の固定預金を解約し、負債を返済
過剰な在庫を調整し、売却金で負債を返済
増資を行い、その資金で負債を返済
経営に関係のない固定資産を売却し、負債を返済
期末にできる限り未払金の清算を行う
工事進行基準の採用
★収益性・効率性

総資本売上純利益率 X₃
寄与度 21.4%
対策優先順位②

売上総利益 ÷ 総資本(2期平均)× 100
総資本に対する売上総利益の割合、つまり投下した総資本に対する売上総利益の状況を示す比率で、高いほどよい
・売上高を上げ、売上原価を下げる
・売上原価に、工事以外で用いた費用を参入させない
・仕入れ材料は、当期に使用した材料費のみを参入する
未成工事分は、未成工事支出金に参入する
定期等の固定預金を解約し、借入金を返済
過剰な在庫を調整し、売却金で借入金を返済
経営に関係のない固定資産を売却し、借入金を返済
売上高経常利益率 X₄
寄与度 5.7%
対策優先順位⑥
売上総利益 ÷ 売上高 × 100
売上高に対する経常利益の割合、つまり企業の経常的経営活動による収益力を示す比率で、高いほどよい
・経常利益を増やす
利益率の高い工事を受注できるよう努力する
無駄な経費(浪費)を少なくする
・支払利息等の営業外費用を少なくする
★財産健全性
自己資本対固定資産比率 X₅
寄与度 6.8%
対策優先順位⑤

自己資本 ÷ 固定資産 × 100
設備投資等の固定資産がどの程度自己資本で調達されているのかを見る指標で、高いほどよい

増資により、自己資本を増やす
毎年利益を出し、利益剰余金を増やす
遊休資産を売却し、固定資産を圧縮する

自己資本比率 X₆
寄与度 14.6%
対策優先順位③

自己資本 ÷ 総資本 × 100
総資本に対して自己資本の占める割合、つまり資本蓄積の度合いの示す比率で、高いほどよい

増資により自己資本を増やす
毎年利益を出し、利益剰余金を増やす
定期等の固定預金を解約し、負債を返済
過剰な在庫を調整し、売却金で負債を返済
経営に関係のない固定資産を売却し、負債を返済
・役員や従業員に対する貸付金を回収する
・仮払金のような仮勘定科目を清算する

★絶対的力量

 

営業キャッシュフロー X₇
寄与度 5.7%
対策優先順位⑦

(前期キャッシュフロー + 当期キャッシュフロー)÷ 1億円 ÷ 2
企業の営業活動により生じたキャッシュの増減を見る比率で、高いほどよい

経常利益が多いほどよい
減価償却費が多いほどよい
引当金増減額が増加しているほどよい
法人税、住民税及び事業税が少ないほどよい
売掛債権増減額が減少しているほどよい
仕入債権増減額が減少しているほどよい
棚卸資産増減額が減少しているほどよい
受入金増減額が増加しているほどよい

利益剰余金 X₈
寄与度 4.4%
対策優先順位⑧

利益剰余金 ÷ 1億
企業の営業活動により蓄積された利益のストックを見る比率で、高いほどよい

毎年利益を出し、利益剰余金を増やす

まとめ(経営状況全体に影響する対策)

上記は個別指標に対する対応策ですが、指標事に対応するのはなかなか難しいことですので、主に次の共通事項に対して対策してみてください。

借入金を返済する

事業投資には借入れが必要ですが、金融機関に頼まれて仕方なく借り入れたものなど、不要な借入金は少しでも減らす努力が必要です。

例えば、
・固定預金の解約
・遊休資産の売却
・役員や従業員に対する貸付金の回収
・公的融資を利用し、低利の資金を導入する
などの対策を行うことにより、浮いた資金により借入金を返済し、支払利息を減少させることができます。

自己資本を充実させる

自己資本を増やすため、適正利益を確保して利益剰余金をコツコツと積み増していかなければなりません。

例えば、
・増資の実施(経営者からの借入金を資本金に振替えるなど)
・適正利益の確保による利益剰余金の積み増し
など

工事原価及び販売管理費の圧縮

利益の出ない工事の受注を極力減らすことと、予算に基づいた売上総利益率の確保を行わなければなりません。

例えば、
・予算に基づいた支出を行う
・工事の見積を正確に行う
・持ち越し在庫を活用する
・加重・重複仕入れをしない
・工程管理の徹底(工期の厳守、日程間違い、手待ち時間をなくす)
など

その他

その他、経営状況分析点に影響を及ぼす対応策を講じます。

例えば、
・売掛債権の積極的な回収
・仮勘定の清算(決算書に仮勘定を残さない)
・減価償却の実施
など

これらの対策を行なうことは、経営状況分析点のアップ対策だけでなく、経営改善に通じることですので、できる限りの対策を行うようにしてください。

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